IT人の政治リテラシー向上を目指して

元政治家秘書、現IT起業家が主にIT起業家、エンジニア、デザイナーなどIT業界人の政治リテラシー向上を目指して、日々のニュースや政治トピックについて言及。たまに起業ネタや映画、アニメネタなども。ちょっぴり認識力が上がるブログ。

高付加価値貨幣論(未来における通貨の一つの可能性について)

世界的に通貨の交換が行われるようになり、その裏付けとして金本位制が導入されたのが19世紀、そしてそれが消失したのが20世紀に入ってのことだった。

 

裏付けに金という実態を失ったにも関わらず、紙幣はすぐにはただの紙切れとはならなかった。それは、紙幣への信仰が残っていたこともあるだろうが、より本質的な理由があったのではないだろうか。

 

貨幣の本質、そして未来の通貨に関して今回は考察をしていきたいと思う。

 

まず、金本位制が崩れたあと、世界はなぜハイパーインフレになっていないのだろうか?

近頃、グレートリセットなどが叫ばれているが、それは言ってしまえば、経済実態に対して通貨、紙幣が増えすぎたことによるテーパリングのことではないのか。

 

確かに昨今、世界的にインフレで物価は上がってきている。だが、なぜ今なのか、金本位制が終わった時ではなかったのか、その辺りに誰も気が付かないインフレの本質があるのではないだろうか。

 

まず、インフレとは実態経済に対して貨幣があまりにも増えた場合に、生じる現象である。しかし、この実態経済とは何か、というところが全くの不明である。

 

金本位制であった時が、それが明確で金であった、それだけで、それ以降の通貨は完全になんの裏付けもないものなのだろうか?

 

「ペトロダラー体制」という言葉がある。これは石油に対して取引通貨としてドルを選ぶ、ドルを基軸通貨とする一つの根拠となっている。

 

ドルが基軸通貨である以上、ドルにペッグした通貨の価値はドルの価値に依存するが、ドル自体の価値を金の代わりに担保するものとして、実は石油が使われていたのではないだろうか。

 

しかし、金の代わりに石油を裏付けとした貨幣であったとして、ドルの価値と石油の価値は必ずしも比例関係とは言えない。

 

実は人間が思っている以上に、通貨の価値は実態経済に紐付いているものではないのだろうか。

 

例えば、ここ100年の世界的な実態経済を眺めてみると、次々に新しい商品が市場に登場している。まず、石油製品、自動車などに代表される電化製品、そしてインターネットに紐づいたwebアプリケーションなどである。

 

プラスチックは石油ゴミから作られ、インターネットに至っては電気を変換しているものに過ぎない。つまり、ゴミやエネルギー、無から人間の創造力によって、新たに付加価値が作られていると言っても過言ではない。

 

そして、これらの人間が生み出した付加価値の総量こそが、実態経済を支える石油以外の要素となっていたのではないか、というのが本稿の着想である。

 

もう一つの人間が無から生み出した価値が、株式会社と言われるシステムそのものである。

つまり、何らかの付加価値を生み出す組織そのものに価格を付け、取引できるようにしたのである。

 

付加価値を創出する着想からすると、この発想は革命的である。

単なる商品に加え、それを生み出す組織、個人までも実態経済にしてしまうわけだから、一種の錬金術と言っても何らおかしなことはない。

 

そして、現在のインフレとは、実際にこうした付加価値を創出するネタが世界的に尽きてきたことによることではないだろうかということである。

 

事実、例えばAIやブロックチェーンといったものは期待したほど、大きな市場を生み出せていない。石油から車、家電製品が生まれたインパクト、インターネットからパソコンやスマートフォンが生まれたインパクトと比べると、小さなマーケットにおけるイノベーションに過ぎないと言える。

 

他にもここ10年で何か革命的な経済の変動はあっただろうか?

中国における経済成長により、中国の株式会社はいくらか成長したかもしれないが、結果的に世界経済における、局所的な経済成長は資源と経済のパイの奪い合いだけが起き、全体の実態経済を底上げできるに至っていないのではないだろうか。

 

日本の経済の伸び悩みもまさにこれが原因であるのではないか。

すなわち、限られた経済マーケットと資源を奪い合うだけで、上に老人たちが利権として居座り、その老人から利権を譲られない限り、決して豊にはなれない。

 

経済的に豊かな人間の数は一定で、その席を奪い合うだけ、それが日本の経済の実態ではないだろうか。

 

しかし、その一方で貨幣だけは永遠に発行され続けている。

これでインフレにならない方がおかしいと言えるだろう。

 

だが一方で、インフレの実態が本当に厳密に実態経済と結びついているのであれば、未来の通貨には可能性がある。

 

例えば、絵画や芸術のような世界である。

絵画はわかりやすい、絵の具とキャンバスは数ドル程度のものが、人の手が入るだけで、数万ドル、数千万ドルの価値を生み出すのである。

 

つまり、人間が付加価値のあるものを、ゴミ、あるいは無から生み出すこと、あるいは幾つかの価値の組み合わせでより高付加価値なものを作り続けることができるのであれば、あるいはその経済実態に紐づく通貨量が規定できるのであれば、人間はインフレの呪縛から脱することができるのではないだろうか。