IT人の政治リテラシー向上を目指して

元政治家秘書、現IT起業家が主にIT起業家、エンジニア、デザイナーなどIT業界人の政治リテラシー向上を目指して、日々のニュースや政治トピックについて言及。たまに起業ネタや映画、アニメネタなども。ちょっぴり認識力が上がるブログ。

ジャイアニズムの次に来るもの

日本人が苦手な議論の一つに「悪とは何か」というテーマがあると思う。

 

ここでは善悪を上から目線で論じる代わりに、アニメや映画で「悪」として描かれる存在がどのように変遷していったかを紹介していこう。

 

まずは90年代までを見てみよう。タイトルとそれぞれの代表的な悪役はどんな連中か並べてみる。

 

次にここ最近、2000年代ものを挙げてみる

  • X-MEN →マグニート(能力者のために戦う)
  • アベンジャーズ→サノス(宇宙の平和のために宇宙の人口の半分を消す)
  • Naruto →マダラ(世界の平和のために全員幻術にかける)
  • 鬼滅の刃   →無惨(人間を食べないと生きていけない)
  • コードギアス →(主人公がテロリスト)
  • ワンピース  →(主人公が海賊)

 

単純に比較してみると、従来の悪役のキーワードは「暴力」と「支配」というもので、一番わかりやすいのがドラえもんジャイアンで、悪役は言うなれば「ジャイアニズム」が主流であった。

 

これに対して、昨今のアニメや映画の敵役は複雑化している。

悪役にも事情があったり、世界のために人を殺したり、作品によっては主人公の方が悪役のような物語もある。

要約すると「悪人にも都合がある」「本人は善意のつもりだがはた迷惑」「そもそも種族が違う」

みたいなものがキーワードと言えよう。まず言えるのは、「悪」が複雑化しており、昔のように悪といえばジャイアニズムだけ、ということではない、ということだ。

 

※もちろんこの区切りは全部ではない、90年代でもマトリックス逆襲のシャアといった複雑な敵キャラも出てくるし、最近でも例えばロードオブザリングのサウランのように、クラシックにジャイアニズム全開の敵役も存在する。あくまで全体の傾向だと思って欲しい。

 

また、一つの作品の中からわかりやすく悪の変遷がわかる作品がある。

それは「007」である。

 

欧米のプロパガンダを込めた作品でもあるので、冷戦時代はわかりやすいくらいに世界支配をしたい共産やナチズム、あるいはマフィアのような犯罪組織がジャイアニズム的な敵役として描かれていく。

 

しかし、冷戦の終結後はテロリストが悪役となるが、このテロリストたちがまた複雑である。

元々はスパイであったり、企業を通して裏から国家を支配したりと、どんどん知能犯罪者になっている。

 

またある面、日本人の中では、悪に対する思考マヒのような現象が起きてもいる。

悪の方が格好いい、あるいは世の中には善も悪も存在しない、といった風潮である。

 

それは一重に、安全な日本の中では、悪とはアニメや映画の世界で自分とは無関係なことが多いからではないだろうか。

 

だが、21世紀を代弁する悪役は、おそらくアベンジャーズのサノス的なものであると予想される。そしてそれは、日本人にも降り掛かってくる問題である。

 

サノス的な悪の特徴は以下のようなものである

「言っていることが論理破綻を起こしている」

「一見すると善のような主張をするが、やっていることは悪」

「本人だけが善だと思い込んでいるがどう見ても悪」

「よくわからない信念で人の命を奪う」

「正義の名の下に人に危害を加える」

 

かつて、世界大戦において、人類はわかりやすいジャイアニズム的な悪を経験した(おそらく人類史においてこれが最後であろうと願う)

 

むしろ、世界大戦が起きるまでは、ジャイアニズム的なものは、アメリカの西部開拓よろしく、普通に行われていたとも言える。

 

世界大戦という大災害を得て、ようやく人類はジャイアニズムを悪と見なしたのである。

 

つまり、人類規模的な悪の被害が顕在化しない限り、人類規模で新しい悪を認めることがなかなか難しい。

 

そしていまの、日本、世界を見渡せば、サノス的な事象がいくつか発生していることも、具体例をあげなくても、勘の良い人ならすぐに気が付くと思う。

 

いまの時代というのは、ジャイアニズムとは異なる悪が顕在化し、人類がそれを悪と認識しない限り、どこまでも肥大化していく、そのようなことを試されているフェイズだと言える。