□成田悠輔の衝撃
2022年、年明け早々衝撃を受けた。
それは「日経テレ東大学」というyoutubeのコンテンツが、裏紅白で20万PVを獲得したこと、しかもその内容が、成田悠輔というアカデミーの人間が、酔っ払いながら真面目な話をするということにである。
この衝撃については色々語り尽くせない部分もあるが、大きくは四つポイントがある。
①はじめて真っ当に意見を言う人間がマスメディアに現れた
②そしてその意見を主に若い人を中心に受け入れられているとう事実
③そもそも真っ当なことを言う番組を人々が見るようになった
④成田悠輔の圧倒的な学歴によるエリート破壊力
①はじめて真っ当に意見を言う人間がマスメディアに現れた
これまで、この手のマスメディアの番組といえば、御用学者がポジショントークをするか、不勉強な芸人が感想を述べ合うだけの、情弱向けの誰得バラエティーだった。
それが最近、宮台真司、ホリエモン、ひろゆきといった、ある種の論破ブームが起きたが、彼らはよくよく話を聞いてみると、実は、社会に対してそれ程現実的な提案をできているとは言い難い。基本的に論破、ダメだし、否定、過激論くらいしかなかったが、成田氏はデータを根拠にかなり現実的な実行案を出してくる。
②そしてその意見を主に若い人を中心に受け入れられているとう事実
これまでも政治家や企業家の中にも現実的な話をする人間はいた。
しかし、現状は支持が得られているとは言い難い。ある種のムーブメントのように若者から支持される現象は、まともな人の中には少ない。
その理由は、たいてい、まともな人は真面目すぎて、正論だけを言うのでエンターテイメントとして退屈過ぎるからだ。その点、成田氏はメガネのチョイスからして合格だ。
③そもそも真っ当なことを言う番組を人々が見るようになった
成田氏のエンタメ性もあるが、そもそも、おじさんがビンタされて笑いを取ったり、国民の税金でド派手な衣装を着て歌ったりするエンタメ番組よりも、まともな社会的な議論を若者が見るようになった、というのは感動の一言に尽きる。
世の中のおかしさに対して自分で考え、正しいことを求める人々が増えているということだ。
先ほど挙げたような流行りの論破軍団は、ドイツ観念論的に例えると、真善美のうち、思考の真はあっても、善と美に欠けていたように思う。
「善」と「真」を両立させた人間がマスメディアに登場し、人々から支持される現象は人々も善と真を求めている、という点において希望が持てる。
④成田悠輔の圧倒的な学歴によるエリート破壊力
最後に極めて重要なのが、彼の学歴である。
単なるデータや事実だけの論破なら、ひろゆきもやっていたが、東大主席、イェール大学という圧倒的な対エリートに対する破壊力にある。
特に、東大エリートに対する破壊力が素晴らしい。
例えひろゆきが東大生を論破しても、彼らは東大生(および他の学歴エリートも)という学歴を盾に、自分の誤りを認めないという逃げ道がある。学者、専門家も同様である。
この点、成田氏は全ての分野の専門家ではないが、違う分野の専門家であっても、流石にこのレベルの学歴の人が言う意見は無視できない。
今ごろ御用学者、中途半端なエリートや専門家たちは戦々恐々としているだろう。
彼らのボロがすぐに剥がされてしまうからだ。
日本の場合は、自称エリートがちゃんと仕事を監査されず、ロクでもないことをやっては国民に被害を与えるを繰り返して来たので、自称エリートを論破できる存在は非常に価値がある。
これは、成田氏が老害と呼んでいるような構造論にも繋がってくる。
結局、今の日本を本質的にダメにしているのは、仕組みの上に乗っかって成功しているだけの主にエリート老人たちが、自分の実力だと勘違いし、また周りもそれに文句を言わないため、いつまでも権力の座に居座り、的外れなことを繰り返していることにある。
だが、自称エリート老人は過去の実績や学歴など、社会的に自分の身を武装する手段だけは
構築しているため、なかなかそこにメスが届かなかったのが現実である。
なので、成田氏には東大閥財務省という、災害復興の時に、増税という全世界の経済学のスタンダードとは真逆のことをやってしまうような集団に是非言及していただきたい。
リスナーも、まだ日本は学歴志向、権威志向が強いため、学歴がないベンチャー社長が同じことを言っても、東大で博士みたいな人の方をどうしても選好してしまう。
しかし、東大主席イェールとなると、たまにいる東大よりもハーバードみたいな人でも黙らざるを得ない。
彼のような人に追及されると、結果、どこかの元議員のように感情的に爆発するしかなくなる。そして今の若い人はそうして感情を爆発させる年寄りを全く快く思っていない。
これにより政治家や官僚、アカデミーから不純物がどんどん取り除かれていく可能性がある。
そして成田悠輔が出て来て、支持されている、というのは、背後には時代の流れも存在する。
□認識の時代とは
それは「認識の時代」である。認識の時代とは簡単に以下の特徴がある。
・認識、思考力のある人間が成功する
・認識を得られる情報を人々欲する
・認識がエンタメ化する
これは「真っ当な人が真っ当なことをやれば、社会で認められ、成功できる」という意味でもある。
これは人々の認識力や思考力が上がらなければ、到底あり得ない社会である。
したがって、仮に成田氏がウンザリしてアメリカに引きこもったとしても、もうこの流れは止められない。彼は言うなれば時代の尖兵であるからである。
ちなみに、認識のエンタメ化は成田氏の前にも起きていた。
ひろゆき、ホリエモンなどもそうだが、最もそれが最初にマスメディアに現れたのは、有吉弘行の再ブレイクだったと思う。
毒舌で再ブレイクしたと言われるが、あれも本質的には、視聴者が芸能界のモヤっとしたところを、ズバッと切られることで爽快感を得るエンタメだったように思う。
同じ時期にマツコ・デラックス、最近ではカズ・レーザーなども認識系のタレント勢の流れはまだ続いているが、芸能の世界では強くても、政治経済では素人ばかりのところ、ついに政治経済でも認識系が現れたのが成田氏という流れである。
また、成田氏の登場で日本のアカデミーにも少し変化が訪れるかもしれない。
基本的に研究者はマスコミに出て喋るよりは、自分の研究を優先する人が多く、どちらかといえば、マスコミで喋るような人間を下に見ている節がある。
そのせいもあり、マスコミで露出し喋るのは、素人か御用聞き学者で埋め尽くされ、国民が正しいリテラシーから遠ざかる現象が起きていた。
しかし、成田氏まではいかなくても、アカデミーの世界は元々優秀な人が多い。
自分が正しいリテラシーを発信することが、人の役にも立ち、自分の研究を知ってもらう意味でも良い、とわかれば、今までは象牙の塔に閉じこもっていた研究者たちも少しずつ表に出だすかもしれない。
そうすると、メディアの中でさらに健全な議論がなされ、国民のリテラシーも上がるということにつながれば、それは社会全体で良い変化となるだろう。
例によって岸田政権はグダグダで、世界情勢は国が企業に買収され、終わっている状況だが、日本に関しては、ここから光が差してくる、そんな予感が感じられる年末年始であった。