IT人の政治リテラシー向上を目指して

元政治家秘書、現IT起業家が主にIT起業家、エンジニア、デザイナーなどIT業界人の政治リテラシー向上を目指して、日々のニュースや政治トピックについて言及。たまに起業ネタや映画、アニメネタなども。ちょっぴり認識力が上がるブログ。

鬼滅の刃はなぜヒットしたのか

業界内でも意見がまとまらない理由を無謀にも掘り下げてみる。

また、映画館の配給元がソニーであるとか、ビジネス的な要素よりも、

今回は純粋に作品性のみにフォーカスを当て、他作品と比較も交えつつ分析してみる。

 

まず、鬼滅最大のヒット要因は「女性ファン」の存在である。

子供もヒットしてるが、子供だけを見ると、妖怪ウォッチポケモンがヒットしていることと大差なく、従来のアニメのターゲット層である男性、子供に加えて圧倒的な女性支持が他の作品にはないヒットを生み出している。

 

つまり、「鬼滅がなぜヒットしたのか?」という問いについては

「なぜ女性の間で人気が出たか?」という問いに答えられれば、およその答えにたどり着くことになるだろう。

 

女性にとって他の作品と鬼滅は何が違ったのだろうか?

 

①推しメンの存在(アイドルグループ的要素)

まず、鬼滅の男性キャラ、鬼殺隊は女性にとってアイドルグループと化したことが女性ファン獲得の要因の一つだと思われる。富岡さん人気はありつつ、他の男性キャラも人気がありかつ、男性キャラそれぞれが女性から見て個性的でそれぞれに支持層がいるのである。

 

②女性から見て好ましい男性キャラ設定

炭次郎は妹のために命を賭ける正統派、善逸は女好きなダメ男だけどいざという時頼りになる、猪之助は仮面を外すと美男子。

このように鬼滅の男性キャラは女子ウケする要素が満載である。

そして、重要なのが、女性との適度な距離感だ。

 

他の作品、例えばワンピースの場合は露骨に女性に興味があるエロキャラ(サンジ)、女性に無関心な硬派キャラ(ルフィ、ゾロ)など女性との距離感が完全に男子校のノリである。

 

多くの他のジャンプ漫画も同じような距離感になりがちである一方で、鬼滅はその距離感がちょうどいいのである。

 

③共感、支持できる女性キャラの存在

また鬼滅は女性キャラも、女性から共感および支持を得やすい、少なくとも嫌われないキャラが多い。

 

これもワンピースのようなよくある少年漫画だと、グラマラスな男性の願望や欲望目線のキャラが多く、女性から見たら「そんな女はいない」で終わってしまう。

 

また支持をされるキャラであることも重要だ。同じような路線の呪術回戦が未だ、鬼滅ほどヒットしていないのは、実はここに原因があるのではないかと見ている。

 

呪術回戦はワンピースのような従来型の少年漫画に比べたら女性をしっかり描けてはいるが、支持されるようなレベルにまで至っていない。女性らしいキャラはいても、支持まではいかない。

 

その理由の一つは、胡蝶隊長などの複雑なバックボーンやそれによる人格形成など、女性から見てリアル感がありかつ、それが支持できるものだからだと思われる。

 

ナルトは作者の岸本氏が奥さんに徹底的にヒアリングをして女性キャラを描いたエピソードもあるように、確かにサクラなどの女性キャラはリアルではあるが、それもあくまで男性から見たリアルさであり、女性から支持をされるまでのキャラ設定までは描けていない。

 

④キャラ設定の現実味

鬼滅は一人一人のキャラの過去と、いまのモチベーションがかなりリアルにリンクしている。あまりそこに飛躍や矛盾が存在しない。

 

男性は女性に比べて、あまりそこのリアルさを気にならない。

だから比較的、少女漫画の方が、ドロドロした過去や闇を持った登場人物が多く、それがいまの行動に反映されやすい。(例えばのだめカンタービレや、フルーツバスケットなど、過去のトラウマに関する描写が多い)

 

これに対して、例えばドラゴンボール孫悟空は、サッパリし過ぎていてトラウマも何もない(反対にトラウマだらけのベジータの方が、やはり女性ファンから支持されやすい)

 

ワンピースやナルトのような「海賊王になる」「火影になる」といった自己実現願望は、そもそも男性的で女性からは共感されない。

 

またそもそもルフィがなんで海賊王になりたくなったのかが、よくわからないのだろう。ここに飛躍がある。

 

女性の方が、よりキャラクターのリアル感について敏感に感じやすい、と言っても良いのかもしれない。女性はリアル感の薄い設定だと冷めてしまいやすいのである。

 

⑤説教臭くない世界観

鬼滅は絵柄は複雑で、一人一人の感情的や過去の描写は複雑であっても、そこまで難しい話は出てこない。

 

基本的な世界観は「悪を倒して、妹を救う」だからでもある。

 

これに対して、例えばガンダムのようなメッセージ性の強い作品、政治的な色合いが強い作品は、ともすれば現実を離れ、説教臭くなってしまう。

 

つまり、感情的、人間的に複雑であるのは良いが、それ以上の複雑さになってしまうと、リアルさが薄れ、あまり女性の好みではなくなるのだろう。

 

⑥衣装のディテール

鬼滅は衣装も一人一人デザインが異なり、カラフルである。

コスプレ要素も存在するが、それ以上に、衣装のデザイン性やディテールが好まれているのだろう。

 

ここも男性とは大きな視点の違いである。男は、戦闘服やロボットの格好よさに目はいくが、アムロやルフィの私服のデザインが良いか悪いかなどは考えない。

 

以上である。まとめると特に大きな理由として

・男性のキャラ設定

・女性のキャラ設定

がどちらも女性から、共感・支持されるものであることが、大きく重要ではないかと思われる。

この辺りが女性作家ならではの、女性の支持を得られる世界観作りがうまかったのだろう。

 

またストーリーが面白い、などワンピースなど他の作品でも見られるような特徴は省き、鬼滅ならではのヒットにのみフォーカスを当てた。

 

最後にかなりテイストが近く、同じ女性作家であろう鋼の錬金術師との比較についても述べる。鋼の錬金術師もヒットしたが、恐らく以下の点で鬼滅には及ばなかったと思われる

モノクロームな世界観(ブルートーン一色で衣装もバリエーションがない)

・推しメンの選択肢が少ない(ほぼエドワード・エルリック一択)

・女性キャラの性格バリエーションが少ない

 

特に主要な女性キャラで活躍したのが、アームストロングと師匠のみの両方バトルタイプ、というところが女性の共感を呼びづらかったと思われる。(ヒロイン役のウィンリィがあまり、物語の主軸に絡んでこない)

鬼滅も主役は炭次郎だが、胡蝶やねずこといった、準主役級に多くの活躍を与えたこともファンをうみやすかったのだと思われる。