IT人の政治リテラシー向上を目指して

元政治家秘書、現IT起業家が主にIT起業家、エンジニア、デザイナーなどIT業界人の政治リテラシー向上を目指して、日々のニュースや政治トピックについて言及。たまに起業ネタや映画ネタなども。5分で読める1,000文字、10分2,000字を目標。

通貨と仮想通貨の違い

通貨(法定)と仮想通貨の違いは二つある。

 

一つは「信用を担保する相手」である。通貨は国が信用を担保しているが、

通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律,(略)通貨法,通貨単位貨幣発行法

仮想通貨の信用を担保するのは、仮想通貨を取引する人々である。

 

もう一つは「信用の裏付け先の存在」である。円やドルといった通貨は、一対一の交換レートではないものの、「金」にある程度裏打ちされている。その信用を担保するために、国家はゴールドを備蓄している。つまり、実際に起こるかは別として、金という実物と交換できる紙幣ですよ、ということで貨幣に信用を与えている。

 

これに対して仮想通貨は、裏付けとなる資産は存在しない。仮想通貨でも金は買えるが、それは多くの人々が仮想通貨に価値があると思い込んでいるから、金と交換してくれる人がいるだけで、仮想通貨に関わる人々が、通貨に価値はない、と思い込むと信用崩壊を起こす。

 

つまり大きくは「信用」に関わるところが通貨と仮想通貨の違いであるが、その他の点に関して、通貨と仮想通貨の違いはそうない。

 

まず、よく言われる仮想通貨の実態のなさだが、実は既存の通貨にもそれほど実態があるわけではない。

 

なぜなら、例えば円紙幣は食べられるわけでもないし、それ自体が金でできているわけではない。あくまで国がこれは価値がありますよ、と言って信用を保証しているから価値があるにすぎない。一万円札を作る原価が一万円ではない、という例えの方がわかりやすいのだろうか。

 

そして大半の通貨が今や電子マネーとして銀行に眠っている。当然、銀行の店舗は全ての預金者の預金を実物の紙幣で持っているわけではない。その意味では、通貨も実態がそれほどあるわけでもないし、仮想通貨がなんらかの形で紙幣かコイン化したら、その境目はますます曖昧になる。

 

もっと言えば、あり得ない話だと前提して、G7やIMFが例えばビットコインは世界共通の通貨です。これからはビットコインを使いましょう、と宣言すれば、ビットコインはその時点で仮想通貨でも法定通貨となる。

 

もちろん、仮想通貨がインフレを起こさないために、何らかの裏付けが必要にはなるが、実際いまの世の中の通貨がインフレを起こさないのは、金の裏付けの存在よりも、FRBや日銀のような発行銀行の政策に依るところが大きいため、世界仮想通貨銀行がG7などが主導で作られることになるのだろうが。

 

話を戻すと、よく言われる仮想通貨が中央集権ではないこと、そしてそれを裏付けるブロックチェーンテクノロジーは言うなれば、国家の代わりに仮想通貨に関わる人々が、信用を与え、安全性を担保している、ということになる。

ブロックチェーンとは何か、については各所に文献があるためここでは触れない)

 

Criptocurrency(仮想通貨)においてblock chain技術がコアで、一体のものである、と言われるのは、国家という中央集権、保証機関を除いても通貨が機能するためにブロックチェーンというテクノロジーが補っているとも言えるからである。

 

だが、現実は一部の仮想通貨を大量に取得している人間やマイナー、あるいは極めて優れたエンジニアリング技術を持った企業に権力は集中している。ビットコインのような既に価格が上がったものはともかく、新規の仮想通貨は法規制も乏しく、投資の世界で言う仕手戦で、価格をコントロールできるような無法地帯となっている。

 

そして、度重なる仮想通貨流出事故にあるように、やはり人間が扱う世界であるから絶対はない。法定通貨が銀行から盗まれたら、銀行は保証するし、国や警察当局も動くが、仮想通貨は国が保証する通貨ではないため、国側に動く義務はない。その意味で、「信用保証」という点に絡み、盗まれた時の回復可能性、安全性がやや異なる。ただ、どちらもリスクが存在することには変わりはない。ネムの流出で金融庁が動いたように、社会問題になるような規模の事件では動くこともありえる。

 

ただ、それも仮想通貨、というよりブロックチェーン技術の理念に基づけば、国ではなく、人々のコミュニティの中で仮想通貨の安全性が担保され、盗まれたときに取り返す役を担うプレイヤーの出現が期待されているわけなのだが。

 

仮想通貨は参加者が価値があると思い込めば成り立つものなので、決済の手段として全世界で使えるようになれば、それなりに通貨としては価値を持つようになる。決済先が一斉に取引停止などをしなければ、いきなり無価値になるようなこともない。

 

全世界で使えるようになれば、既存の通貨に比べて利便性も高まる。しかし、その一方で全世界共通の仮想通貨で、それが各国の通貨と兌換できるようになると、各国の通貨が仮想通貨の価値を担保するかのような、奇妙な状態になる。

 

つまり、通貨というワンクッションがあってから、間接的に仮想通貨が金で裏打ちされていることになる。

 

これは仮想通貨コミュニティが目指す状態の一つかもしれないが、前提としてアメリカ、中国、ユーロ、日本、UKなどの主要な通貨を発行している全ての国家の同意が必要となる。だがそれは極めて難しい。コンセンサスが得られないだろう。

 

また、国家は防衛本能を持つため、自国の通貨価値を下げるような存在を容認しない。特に、小国ではそのインパクトが強過ぎるため、規制するのは当然である。(逆に仮想通貨を利用した為替ダンピングなどは論点になりえるかもしれないが、本稿ではそれには触れない)

 

その意味では、非中央集権というブロックチェーンテクノロジーの根本思想に立ち返るなら、仮想通貨は通貨との兌換をするのではなく、コミュニティの中でサービスや実物のみと兌換をしていれば、そのコミュニティが国境を越えていれば良かっただけで、既存の通貨との交換できる必要性はなかったのかもしれない。