IT人の政治リテラシー向上を目指して

元政治家秘書、現IT起業家が主にIT起業家、エンジニア、デザイナーなどIT業界人の政治リテラシー向上を目指して、日々のニュースや政治トピックについて言及。たまに起業ネタや映画ネタなども。5分で読める1,000文字、10分2,000字を目標。

トランプは北朝鮮を攻撃するか、ハイエクから読み解く

フリードリヒ・ハイエクが有名な著書「隷属への道」で説いたことは、ファシズム共産主義も同じ、全体主義の現れに過ぎず、両者には似たようなことがたくさんあるということである。

 

それと同時にファシズムが現れるには、中産階級の破壊や社会の全体主義的な下地があって、生じるものであることも合わせて指摘している。

 

また、これまでの人間社会の風潮として、特定の英雄あるいは悪役を祭り上げる「ヒロイズム」が蔓延しているが、ヨーロッパにおいてナチスドイツが台頭したのは、偶然ではないし、たまたまヒトラーという狂った指導者が現れたということもまた偶発的なことではない。

 

総じて人間は、特定の誰かを血祭りに、あるいは逆に祭り上げることで、物事を単純化して片付けようとするが、それでは真実は見えてこない。

 

さて、なぜトランプの話をする前にハイエクから入り、ナチスドイツの話をしたかと言えば、トランプが出現した経緯が極めてヒトラーの台頭に似たところがあるからである。

 

中産階級の崩壊、特定の階級への憎悪の広がり、政治に対する不信とそれと相反する過激な候補者への期待、全ての候補者に都合のいいことを言い、当選したらそれを反故にする政治家

 

これらは全てワイマール体制のドイツの現代のアメリカ社会に共通して見られる特徴である。

 

そしてヒトラーとトランプを比較してみると、両者ともファシズム的な要素を持ち合わせている。

 

ここでファシズムという言葉を改めて検討したい。というのは、独裁とファシズムというものが曖昧になりがちだからである。

 

ハイエクが述べたように、ファシズムは概ね共産主義と一致している。どこで一致しているかと言えば、全体主義的で、権力によって国民を一定の方向に強制するという点である。だが、ファシズム共産主義が異なるのは、ファシズムは国外、あるいは国内の特定の層から搾取する方向に向くのに対し、共産主義は資本家から土地を没収するベクトルに向く。

 

王制のように、単なる独裁は必ずしも全体主義と結びつかない。そしてファシズムが初めから対外的な拡張を抱えているのは、ファシズムとは国民が独裁者により富を望み、かつその富が得られる先が自国に存在しない、あるいは特定の人々に集中しているからである。ファシズムというのは常に敵の存在を求める体制なのである。

 

しかし、アメリカ国民の大半が無自覚的に本当に期待している大金持ちの資本階級への攻撃は起こらないだろう。それは共産主義であり、アメリカ人が心底嫌う概念で、そこに彼らは気づいていない。あるいは、日本のように社会主義的に、富裕層に重い税金をかけ富の再分配を強化すれば、アメリカは自らの優位性を失うことになるという様々な自己矛盾を抱えることになる。

 

そして、移民を排斥しようとする流れというのは、ヒトラーユダヤ人排斥に似ているところがある。国内産業を保護し、諸外国に圧力をかけているところも、ファシズムの原理に乗っ取ったものと言えよう。

 

ここで絶対に思ってはならないことは、トランプを生んだアメリカ人が愚かであるとか、今後トランプだけを悪者に祭り上げて終わらせてしまうことだ。

 

ナポレオンにしろ、ヒトラーにしろ、基本的に歴史上、同じ流れ、同じような土壌からファシズムは誕生している。これはある意味、人間社会の法則といっても過言ではないため、当然同じような条件が揃えば日本でも起こり得る。(既に海外から見れば、安倍総理というのはまさにそういう対象だが、日本人だけが気づいていないという説もありそうだが)

 

さて、トランプは国内的には「移民」という攻撃先を見つけたが、対外的にはどうだろうか。もちろん、メキシコ、日本や韓国といった傘下の国から資本を吸い上げようとするだろう。肝心の敵がいなければ、ファシズムは成り立たない。

 

従ってその原理から、アメリカが今後、北朝鮮を攻撃する可能性は極めて高いのではないだろうか。

 

テロは確かに脅威ではあるがファシズムの「敵」とするには弱すぎる(その意味では北朝鮮もアメリカからすれば、充分弱過ぎる敵だが)

 

とはいえ、戦争による特需は生まれ、政治的にも極めて今のトランプにとって都合のいいことが多い。

 

そしてアメリカが北朝鮮を攻撃する、あるいはしなければならない理由がもう二つ存在する。

 

一つは核の非拡散である。現在の北朝鮮政権は本気で核開発をしており、それを盾に国際社会を脅している。ここで核開発に成功した場合、闇市場を通して中東諸国に核が流出しないという保証が全くない。

 

もう一つは、先日起きたマレーシアでの公然の暗殺事件である。ロシアやイスラエルも暗殺はよく行うが、それはあくまで裏の話であって、公然とした暗殺、言うなればあれは処刑だが、それを行なっていい国はアメリカ一国だけなのだ。(ビンラディンにしたように)

 

これら二つの理由は、どちらもアメリカの覇権国としての「権益」を侵している。そして覇権国としての権益を侵されたあとで、アメリカが行動しなかった例が存在しない(キューバ危機は核が取り除かれたから戦争にならなかった。あるいはカストロがアメリカの権益そのものに挑んでいたら、キューバも併合されていたかもしれない)

 

裏を返せば、これまで北朝鮮は、核開発をする振りをしてまんまと、お金をゆすり取っていたのであり、非合法な拉致や暗殺を実行していたとしても、それはアメリカの権益に触れるような公然としたものではなかった。だが、今回、そのどちらも一線を超えてしまった。

 

また、ファシズムの本質から考えると、仮に北朝鮮をアメリカが打倒したところで、止まるものとも思えない。ナポレオン、ヒトラー共にヨーロッパ中を巻き込んで戦線を拡大し、最後はシベリアまで到達したが、今のところトランプにとってのシベリアがどこに当たるかは想像がつかない。

 

そもそも当時のフランスもドイツも覇権国ではなく、これほどの超大国、覇権国が全力でファシズムを他国に振りかざす可能性があるのは、歴史上初めてかもしれない。

 

ITが普及した現代的な社会においては、その戦場が複雑に入り組んだ経済、法律、あるいはサイバー空間上のものとなるのかもしれない。