IT人の政治リテラシー向上を目指して

元政治家秘書、現IT起業家が主にIT起業家、エンジニア、デザイナーなどIT業界人の政治リテラシー向上を目指して、日々のニュースや政治トピックについて言及。たまに起業ネタや映画ネタなども。5分で読める1,000文字、10分2,000字を目標。

ドナルド・トランプに見る、今アメリカで何が起きているか

久しく政治に触れてなかったのは、特に敢えて自分が解説するような問題がなかったからである。(日本の政治については論じるようなことすらない)

 

アメリカ選挙、ドナルド旋風についても基本的なことは特に解説しない。

 

ただ、簡単に触りだけ説明すると、アメリカは元々そろそろ白人がマイノリティーに転落し、白人が支持母体である共和党は選挙に最早勝てないと言われていた。そこに現れたのが、ドナルド・トランプだ、ということだけ最低限の前提として必要な知識である。

 

つまり、現状のトランプ旋風は、元来の共和党にはできなかった、非白人、ヒスパニックなどの民主党支持層を喰っているということになる。

 

これは、かつての「自民党をぶっ壊す」と言って、非保守層から支持を集めた小泉純一郎に非常に似ている、と言えば日本人には分かり易いだろう。

 

さて、では問題は何故、ヒスパニック層を始めとする非白人層がトランプを支持しているか、注目すべきところは、民主党内における指名争いの激化である。

 

明らかにヒラリー・クリントンに対するアレルギーが特に若年層を中心に広がっている。

 

クリントンに対するアレルギーとは何か。それは、有権者クリントンオバマと同じ、あるいはそれ以上に失望させる人物だと見ていることだ。

 

理由は単純である。オバマになってもアメリカは何も変わらなかった(少なくとも、アメリカ国民が期待するような”change”は起きなかった)

 

これは極めてシンプルな理由で、アメリカは元々大国過ぎて行動を逆に制限されている(例えば嫌でも中東に介入せざるを得ない)のと、オバマの最大の資金源、後ろ盾はウォールストリートにあるからだ。そこに逆らうような政策はことごとくできない。

 

クリントンオバマと全く同じ資金源を持つ。従って、その事実を知るアメリカの知識階級、本質的な改革を望む層は当然支持しないだろう。

 

若者が抱える問題はとてつもなく開いた経済格差だ。だが、クリントンになれば、その体制はまず変わる事はない。むしろ、中東でもっと面倒事を起こすだろう。そう見ている若者層は決してクリントンには投票しないだろう。

 

おそらく、クリントン、トランプに両代表が決まった場合、無党派層がこれまでにないほど、拡大もするだろう。

 

そして、どちらになってもそれがアメリカの最後の大統領になると私は見ている。

 

それは、文字通りアメリカが崩壊する可能性、それも決して0ではないが、要するに今我々が見ているアメリカではなくなるということだ。(アメリカ崩壊は、南北に分裂することではない。アメリカ内部における権力構造が変化する、ということだ。外観のアメリカ合衆国という看板を残したまま)

 

理由は2つある。1つは国内で貧富の差によるトラブルを抑えきれなくなる。これは、単純に現状国民の不満というコップの水が一杯のところに、両候補者の態度が強硬であることが、そこに水を注ぐ行為となるからである。従ってどちらの候補者でも結末は変わらない。

 

もう1つは、既にアメリカが世界をコントロールできていない。ウクライナ、シリア、が最たるもので、南沙諸島もそれに入る。

もしトランプになれば、中東から軍を引き、それで中東は混乱し、違う勢力が入り込み、その後ろ盾となる国(ロシアや中国)の国力が増大する。イスラエルの地位も脅かされるかもしれない。

もしクリントンになれば、シリアへの介入を強め多正面作戦となり、アメリカは相当な消耗を強いられ、国内、海外共にかなりの反発を受け、最後はテロによる甚大な損害を被ることになるだろう。

 

つまりどちらにせよ、既にオバマ、あるいはもっと以前にアメリカの土台がぐらつく前提は用意されていて、誰が大統領になってもどうすることもできないのだ。

 

アメリカはこの現状に陥らないようにする最も大きな機会は、ここ数年では2度存在した。ブッシュ大統領イラクに地上部隊を送りフセイン政権を倒したこと、そしてもう1つはシリアの内戦をコントロールできなかったことである。

 

結局のところ、どちらも中東における失敗が大きな原因と言えよう。

 

だが、これは大国のジレンマというものであり、どの国が覇権国となってもそれを回避できるという代物ではない。(中東に介入しなければいい、という理屈は通じないということ)また北極海航路開拓のような致命的な事が起きなければ、内部の仕組みが変化してもアメリカが世界最大の覇権国であることに揺らぎはない。

 

私はトランプ、クリントン、どちらもアメリカという国に“引導”を渡す大統領に見えてならない。片方は今の体制を壊すことで、もう一方は今の体制を守ろうとすることで。(これは仮に万が一他の候補者が出て来ても変わらない構図であることも、容易に想像ができるだろう)

 

タイトルに戻るが、結論を言えば、トランプという人物が支持を集めている、ということ自体に、要するにアメリカの終焉を見なければいけない、ということだ。(勿論これを読み解くにはアメリカの選挙システムや政策など幅広い理解が必要となる)

 

勉強を必要としない理解、もっと単純化して説明するなら、現状の体制に不満のない国民であれば、トランプのような過激な改革を叫ぶ人間は、土俵にすら上がることはできないはずだ、ということ。(国民が改革を望み、優秀なエリート候補者は皆、改革ができない、と国民に思われていなければ、彼のような過激な改革を叫ぶ人材は出れない)

 

これはクラウゼヴィッツ的に言えば、アメリカは民主主義制度における行動の限界点を突破している、ということだ。極端な事例を出せば、ヒトラーが誕生したドイツに近い状態にある(もちろんかつてのドイツと現在のアメリカには地位も国力も大きな隔たりが存在するが)

 

そして、もう1つ、今世界を大きく揺るがそうとしているのが、クルド人の問題ではないかと私は見ている。これはもちろん、アメリカの問題と無関係ではない。もう少し世の中に解説が出揃ったら、この問題は足りなければ補足しようと思う。