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IT人の政治リテラシー向上を目指して

元政治家秘書、現IT起業家が主にIT起業家、エンジニア、デザイナーなどIT業界人の政治リテラシー向上を目指して、日々のニュースや政治トピックについて言及。たまに起業ネタや映画ネタなども。5分で読める1,000文字、10分2,000字を目標。

既に搾取されている日本

今回はエマニュエル・トッドのドイツ観に着想。

Amazon.co.jp| 「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書)| エマニュエル・トッド, 堀 茂樹| 本

 

業種にもよるが、ドイツ人は一月もの休暇を取ることができるが、日本人は一日の有給を取る事さえはばかられる。その説明はあくまで、日本の文化慣習によるものであると説明されてきたが、当然私が納得いくようなものではない。

 

より根本的な理由の一つとして、ドイツの方がロンドン標準時に近いことは確かにある。日本は地球の反対側にあり、ロンドンマーケットに時間を合わせるような仕事をしている場合、労働時間がいびつなものになる。

 

だが、本質的な原因というのは、日本が既にグローバル市場において、搾取する側でなく、される側にまわっているからだ、という事が事実であれば納得がいく。

 

まず、始めの原則として日本という国は太平洋戦争の後、徹底的に欧米によって価値観が破壊されてしまっている。

 

これは旧日本の価値観が優れていたからとか、今の欧米主義の全てが悪いというレベルの話しではなく、事実としてあの日を境に全く違う国になっている、という事である。

 

安倍晋三があんなにも安保に熱心なのは、彼はそこに気づいていて、心情としては実際にはここに根ざしているものがある。彼が持つ日本に対する愛や誇りというものは並々成らぬものがあり、ほぼ無意識に欧米主義に隷属し、拝金主義に陥っている大半の日本人など彼にとっては我慢のならない存在であろう。

 

その点は評価できるとしても、それならば彼の問題は想いを表現する表現力と、現実的に実現するために知性に乏しいことだろう。それが昨今の自衛権を巡るよくわからない、総理と国民の間の本質的な対立である。

 

総理の方が日本を愛し、誇りがある。大半の日本国民の方が、プライドがない俗物である。だが、残念ながら国民の方が俗物であるが故に現実的で理性的なのだ。

 

この問題は唯一、司法界だけが誠実で現実的な主張をしている。

 

話しを戻すが、日本の収奪というのは実際にこの時に始まっているが、朝鮮戦争を機に日本は、アメリカと共にアジア諸国を搾取する側に転じる。これが一つの高度成長期とバブル経済の本質である。

 

それらの過程があった上で今、何が起きているかと言えば、エマニュエル・トッドの指摘によるまずドイツによるヨーロッパ諸国への搾取だ。(アメリカによる中南米に対する搾取も同様にずっと続いているが)

 

何故ドイツ人は労働時間が少なくかつ、高い賃金を維持できるか?これは基本的にアメリカも同じだが、それは他国の労働者を搾取、あるいは自国の低賃金労働者を搾取できているから成り立つのである。(もちろんドイツにもアメリカにも日本人より働くエグゼクティブは存在する。だが、その給与は桁違いである。)

 

どちらも多数の移民を抱えている。アメリカは主にメキシコから流入してくるヒスパニックであり、ドイツは東欧から来るスラブ系の労働者である。

 

それに対して、日本は搾取すべき他民族というのはほとんど選択肢がない。「学歴社会」という意図的な貧困層、つまり昔と変わらない「えた・ひにん」システムを自国民の間で作り出しているが、手厚い社会保障と高い教育水準に守られて、ドイツやアメリカほどの格差社会を今の所は形成できていない。(だから今その方向に向かっている。)

 

そうすると、中間層、つまり労働者から搾取する、という現象が現在の日本には起こっている。つまり年収400万〜2000万、ある意味欧米では搾取する側になっている層も搾取される側になっており、それに国民が気づいていない、という真に愚かしい現象が起きている。

 

自分が搾取する側であり、される側でありそれに気づいていない、というのは日本人の一つの特徴であろう。

 

だが、何故日本人が最近になって搾取される側にまわったか?その理由の一つが、アメリカの凋落とドイツの台頭(あるいはそしてASEANの先進国化、中国の経済大国化)があるのではないかと暗に指摘したくて、氏はこの本を日本に向けて上納したのではないだろうか。

 

要するに日本人は長く働かなければ、今の経済力を維持できない。より多くの労働者を動員しなければ、経済大国として搾取する側にまわることができない。そのように追いつめられているというわけだ。

 

ではその本質的な原因とは何か、と言えばそれは佐藤優も繰り返し指摘しているように、各国が急速に帝国主義化しており、ブロック経済圏を構築し、それ以外のものを閉め出そうとしていること。同時にピケティの言うように、1%の人口に富が集中し過ぎていて、分配機能が全く破綻していることにあるだろう。

 

「食うか食われるかの嫌な時代になってきた。」そう佐藤優氏が呟いていたが、その片鱗が休めない労働環境なのだろう。そこに何人の日本人が気づいているのだろうか?

 

ここで私は、あるいはトッド氏は日本にドイツのようになれ、とかあるいはかつてそうしてきたことを復活させろ、と言いたいのではない。

 

日本がすべきことはそうした事に対するアンチテーゼを投げかけることだ。

 

それが日本の国際社会における本質的な立ち位置であるのだから、大半の日本人の無意識な欧米拝金主義への妄信など愚の骨頂であると言わざるを得ないだろう。